ワイヤーボンダ (WEST BOND 7476D) の使い方

Information

VLSI評価室に設置されているウエッジワイヤーボンダ (ウエストボンド 7476D) を使用して、プリント基板にベアチップをボンディングするための手順について解説します。この装置で、5cmX5cm程度までの基板に直接チップを取り付けることができます。基板の表面処理は、金フラッシュまたは無し(銅)にする必要があります。チップは基板の所定の位置に、ドータイト、耐熱エポキシ樹脂接着剤などで取り付けておいて下さい。
注:先の平たい精密ピンセット(ワイヤーのセット用)、先の尖った精密ピンセット(ワイヤーの除去用)、プラスドライバ(Work Holderの基板サイズの変更)は、事前に各自で用意してください。

Contents

  1. 全体の概観
  2. 電源の投入
  3. 基本操作
  4. 終了
  5. 不具合への対処
  6. ノウハウ集

全体の概観

全体の概観は図1 のようになる。本体、顕微鏡、ワイヤ−ディスプーラ、ワークホルダー、エアコンプレッサから構成される。

Appearance
図1 全体の概観

電源の投入

Air Compressor

空気の圧縮をするための装置である。図2 のスイッチをON にすると、騒がしい音が始まり電源が入る。

Air Compressor
図2 Air Compressor

Power Switch of Air Compressor
図3 Air Compressor のスイッチ

Wire Dispooler

ワイヤーを自動的に供給するための装置である。図4 のスイッチをONにすればよい。

Power Switch of Wire Dispooler
図4 Wire Dispooler のスイッチ

顕微鏡

そのまま使えるが、図5 のライトをON にする。あとは細かい調整をしてピントを合わせる。

Power Switch of Microscope
図5 顕微鏡のスイッチ

Wire Bonder本体

図6 の本体のスイッチを入れる。(実際はどの装置のスイッチからつけても大丈夫だが・・・)スイッチをいれた後、図7 のようになればOK。

Wire Bonder
図6 ワイヤーボンド本体
Initial message on the diplay
図7 スイッチON後

Work Holder

最後に、図8 のWork Holder というものがあるが、このスイッチは入れなくて良い。このスイッチを入れるとホルダーが高温になるが、通常の用途では高温にする必要はない。

Work Holder
図8 Work Holder

基本操作

ボンディング

さきほどの図8 のWork Holder に基板とチップをセットする。その後、図9 のマニピュレーターアームを操作してボンディングをしていく。

Manipulator
図9 マニピュレーターアーム

このアームによって、ボンディングウェッジを上下左右に動かすことができる。これは説明を読むよりも実際に動かしてみるとよい。動かすことができたら、後は顕微鏡を見ながらボンディングをしていけばよい。奇数回目は、ワイヤーを接続して伸ばす操作となり、偶数回目は、ワイヤーを接続して切る操作となるので、接着に失敗した場合は、練習用基板で、一度、空撃ちをしてからやり直す必要がある。

  1. 顕微鏡のフォーカスをパッドに合わせる
  2. ウエッジをパッドに軽く押し付けると音が鳴るのでそこでストップ
  3. 次にある程度上に持ち上げるとワイヤーが伸びて、また音がするのでそこでストップ
  4. 基板の電極側に再びボンディングをするとワイヤーが切れる
  5. 顕微鏡のフォーカスを調整して、基板側のボンディングが正常に行われたことを確認する
基本的にはこの繰り返しをしていく。ただし、ボンディングは手前から奥の方向にしかできない。それ以外の方向に動かすとワイヤーが断線するので注意!

[参考] 本装置で採用されているウエッジボンダー(ワイヤーを溶かしたボールを作らずに側面を圧着させる方式)では、構造上一方向にしかワイヤーを伸ばすことが出来ないため、基板の向きを回転させて、ボンディングを行う。

終了

各装置の電源を切る。どの電源から切っても問題ない。

不具合への対処

だいたいはワイヤーが切れる不具合が起こることが多い。マニュアルウェッジワイヤーボンダー取扱説明書に対策が書いてあるので、それを読むと良い。

ClamperClamp Switch
図10 ワイヤークランパー図11 CLAMPスイッチ

ノウハウ集

  1. ピンセット
    ピンセットは、図のように2種類用意し、ガイドの管やウエッジ先端にワイヤーを通すときは、先が薄くて平たいものを使用し、ボンディングに失敗したワイヤーの除去には、先端の尖ったものを使用する。ピンセットの先端がぴったりかみ合う高精度なものが必要。例:ホーザン P-888(へら型), PP-111(尖端型)

    Tweezers
    2種類のピンセット

  2. ワイヤーの除去
    パッドへのボンディングを行った後、基板電極への接続に失敗した場合、ワイヤーを取り除いて、再度ボンディングをやり直す。パッド側の接続に失敗することは少ないが、ワイヤーが付かなかった場合は、練習用パターンの上で空撃ちをして、接続を確認してからやり直す
    1. 尖端型ピンセットの先をチップの角付近の基板に置く
    2. 顕微鏡でピンセットの先を確認。見えない場合は、ピンセットの位置を少しずらす
    3. ピンセットでワイヤーの途中をつまんで引っ張る。通常は、パッドに付けたところでワイヤーが切れる。

  3. ワイヤー通しのコツ
    スプーラから出たワイヤは、ガイドのパイプ〜クランプの間隙〜ウエッジの穴に通す。ウエッジの穴は、肉眼では見えないので、勘で通す必要があるが、ワイヤーをピンセットで真横から挟むのがコツ。ウエッジの穴は、開口部が円錐形になっているので、ワイヤーを適当に当てると通るようになっているが、適切な角度があるようなので、試行錯誤で勘を掴む必要がある。
    1. CLAMPスイッチをOPEN側に倒す
    2. ワイヤーをガイドのパイプに通す。パイプの入り口で、へら型ピンセットで挟んで、少しずつ送り込む
    3. パイプに通ったら、ワイヤーの尖端から3mmぐらいのところを、へら型のピンセットではさみ、ウエッジの尖端少し上のところに押し当てると、ウエッジの下側へ通る
    4. ウエッジの下側から出たワイヤーは数mm程度引き出しておく
    5. ワイヤーをクランプの間に通るように、ピンセットで調整
    6. CLAMPスイッチをFEED側に倒す

    Wedge
    ワイヤーの経路

  4. 超音波洗浄
    ワイヤーがウエッジに通らないときは、(滅多に起こらないが)穴がワイヤーの切れ端で詰まっている可能性がある。どうしてもワイヤーが通らないときは、六角レンチでウエッジを外して洗浄する。机の下の超音波洗浄機に水道水を入れ、超純水を入れたビーカーにウエッジを入れて、10分程度ビーカーごと超音波洗浄する。ヒータをかける必要はない。ウエッジの高さが適切でないと、ワイヤーがクランプの間隙を通らなくなるので、ウエッジを取り付けるときには高さに注意。

    [参考] 通常、アルミニウムは水酸化ナトリウム溶液で溶かすようだが、水酸化ナトリウムは劇薬なので、これは最後の手段。これまでの経験では、アルミの破片は、超純水だけで十分に分解除去される。

    Ultrasonic Cleaner
    超音波洗浄機

  5. 練習用基板の利用
    ワイヤーの接続に失敗した場合、ウエッジにワイヤーを通しなおした時、ワイヤー先端が適切な長さでウエッジから出ていない場合などは、練習用基板を使って、試し撃ちをする。

    PCB for Practice
    練習用基板

  6. スプーラのワイヤーが絡まるとき
    スプーラは、ワイヤーが一定の張力になるようにワイヤーの長さを調整しているが、誤動作してワイヤーが切れたり、スプーラの中で絡まったりすることがよくある。通常の使用法では、ワイヤーが、前面のローラーを通ってガイドのパイプの方へ送られるように、スプーラの向きを調整するが、ワイヤーが上手く送られない場合は、横からワイヤーを引き出し、ガイドの方へ送ってもボンディングができるようだ。ただし、この状態では、ワイヤーが自動的に送られない。ワイヤーが短くなってきたら、スプーラの送りボタンを押して、手動でワイヤーを送る必要がある。

    Spooler
    スプーラ

  7. ワイヤーの用意
    ワイヤーは消耗品なので、各自で購入してください。VDEC北陸支部でこれまでに提供していたワイヤーは、Al-Si1%, 径0.025mm(0.001インチ), スプールAL-2インチ。長さ100mで2〜3万円ぐらい。


Copyright: Kazuki Kawai, MeRL@Kanazawa Univ.
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