9. エレクトロメータの測定例

第6章では、取り扱いの容易な直流電源とマルチメータを用いた直流電流-電圧特性の測定例を説明しましたが、このページでは、1台で電流-電圧特性を測定することができるエレクトロメータを用いた測定例を説明します。エレクトロメータは、高精度な可変電圧ソースとfAオーダの高感度電流測定機能を持っているため、絶縁体に近い高抵抗や半導体デバイスのリーク電流などを測定することができます(逆に、低い抵抗や微小な電圧を測定するする場合は、ナノボルトメータを使用します)。また、可変電圧ソースをもう一台用意して、半導体パラメータアナライザの代用として使用することもできます。

  1. 計測器の概要
    電圧ソース+電流計として、ADCMT 8252 エレクトロメータを使用します。微少電流の計測では、シャント抵抗(ケーブルやコネクタのリーク)を防ぐため、電流入力端子が、トライアキシャル構造となっています。トライアキシャルコネクタの結線は多少複雑なので、マニュアルをよく理解した上で結線してください。また、設定によっては、電圧出力端子(HI, LOのどちらか)が高電圧になる可能性があるため、感電に注意が必要です。

    Electro-Meter

  2. ブロックダイアグラムの作成
    8252エレクトロメータは、電圧掃引しながら指定したタイミングで電流や電圧を測定する機能を持っているため、PC側でシーケンス制御をする必要がありません。電圧掃引条件を設定して、実行するだけです。下記のブロックダイアグラムでは、(1) 掃引モードの指定、(2) 掃引範囲の設定、(3) 掃引タイミングの設定、(4) 測定モードの指定 、(5) 出力電流制限(DUTの破壊を防ぐ)、(6) 積分時間の設定、(7) ゼロ調ON、(8) 掃引ステップ数の計算と設定まで行ってから、電圧出力をONにし、トリガ(電圧掃引+電流測定)/メモリへの保存/結果のPCへの転送を行い、電圧出力をOFFにします。8252計測器ドライバのReadブロックは高機能で、電圧掃引のトリガからPCへの転送までの処理を一括して行ってくれるようです。

    Block Diagram

  3. フロントパネルの作成
    頻繁に変更する必要があるStart Voltage, Stop Voltage, Voltage Stepだけ入力するようにしてあります。グラフの縦軸は、微少電流を計測することを想定してマイクロアンペア表示にしてありますが、計測器から出力されるデータ自体はアンペア単位ですので、ファイルに保存されるデータもアンペア単位になります。

    Front Pannel

  4. 測定
    GPIBアドレスの設定方法は、計測器のマニュアルを調べてください。
    下記の結線は、DUTの両端子をフローティング状態で測定する場合の結線です。本体のHI, GND端子はショートプラグで接続されています。GUARD端子は、計測器側で電位制御しますので、OPENのままでかまいません(電流は流しません)。この結線の場合、GND側(青線)が、正電圧側になるので、極性に注意してください。また、シールドボックスを使用する場合は、この結線とは異なりますので、マニュアルを見て正しく結線してください。

    I-V Measurement Circuit


up