1 準備

1.1 ATSの起動と立ち下げ

ATS-100を使用するときは、まず本体上部を覆っている除電シートを外します。測定が終わった後は、除電シートをかけておきます。ATS-100を起動するには、次の手順を踏みます。各スイッチの場所は、図1.1を参照してください。

  1. ATS本体の後方下部にあるブレーカを上げる
  2. ATS本体の下部の空間(本当は、ATSを傾けるためのスペース)に入れてある、HP社直流電圧源のスイッチを入れる
  3. 本体上部のスイッチをオンにする。ATS本体上部のIdleと書かれたLEDが転倒するまで待つ

ATS本体が起動すると、ワークステーション上で IMS Screenが使えるようになり、測定ができます。測定後のたち下げの方法は、立ち上げの逆順で行います。つまり、ATS本体上部の電源をOFFに、直流電圧源の電源を切り、ATS本体裏側のブレーカを落とします。

Power1 Power2 Power3
図1.1 (a) ブレーカ (b) 直流電圧源 (c) ATS本体

1.2 DUTサブボードの取り付け

ATS本体には、様々なテクノロジで試作されたチップをテスターとEBプローバで測定できるようにした、VDECアダプトが取り付けられています。測定には、チップパッケージに応じたDUTサブボードをVDECアダプトに取り付けるのですが、取り付け方向に注意が必要です。VDECアダプトの1番ピン方向と書かれたシールが張られているところに、DUTサブボードの白い三角に塗られた角を合わせます。しかし、チップを乗せる方向は、ボードのシルク印刷の番号に合わせます。間違って、チップの1番ピンを、VDECアダプトの1番ピン方向に合わせると、シミュレーションの時に指定したピンに別のピンがアサインされます。ここでは、DUT-SUB-MOT23-80QFP というDUTサブボードを使用します。

また、ATS本体上部での作業は、チップやATSの静電破壊を防ぐため、静電気防止リストバンドを付けて行うこと。心配なら、図1.3の帯電防止ブロワーを使用するとよいでしょう。

DUT Sub-board Anti-Electro Static Blower
図1.2 DUTサブボードの取り付け方 図1.3 帯電防止ブロワー

1.3 環境設定

IMS制御用のSUNワークステーション(vlsitest)にログインしてください。アカウントは、管理者に聞いてください。ログインしたら、作業用ディレクトリを作成します。~/data/ の下に自分の名前やプロジェクト名などのディレクトリを作成します。ただし、本実習では、予め用意された作業ディレクトリ ~/tutorial/ を使用するので、新たに作業ディレクトリを作成する必要はありません。

vlsitest> cd ~/data [RET]
vlsitest> mkdir 作業ディレクトリ名 [RET]
vlsitest> cd 作業ディレクトリ名 [RET]

1.4 タイムドメインレフレクトメトリ

通常、DUTサブボードの取り換えがあった場合、チップの信号ピンまでの信号の到達時間を揃えるために、TDR(タイムドメインレフレクトメトリ)を行ないます。TDRはチップを取り付ける前に行います。よほど正確な測定が必要な場合でなければ必要ありません。必要になったら、IMSのマニュアルを調べてください。

1.5 チップの取り付け

DUTサブボードにチップを取り付けるときは、ATS本体や直流電圧源の電源を切っておきます。静電気防止リストバンドまたは帯電防止ブロワーを使用しましょう。また、図1.4のようなVacuum Pickという工具を使用すると、チップを傷めず、用意にチップの取り換えができます。チップの取り付けは、DUTサブボードのシルクプリントの1番ピンに合わせて行います。間違っても、チップの1番ピンを、VDECアダプトに貼られた1番ピン表示の方向に合わせてはいけません。チップの1番ピンの見分け方は、VDECのチップ試作ページのパッケージ外観図を調べてください。本実習で使用するチップでは、1番ピン方向の角が少し面取りされています。

Vacuum Pick
図1.4 Vacuum Pick

1.6 チップ試作からテストまでの流れ

チップ試作からテストまでの流れを簡単に説明したフローチャートを図1.5に示します。ATS-100 を制御するのが、IMS Screenであり、Verilog HDL のテストベンチ出力ファイルからテスタに読み込ませるテストベクトルを作成するのが、IMS Linkです。フルカスタム設計では、HSPICEのシミュレーション用入力ファイルとATS-100のテストベクトルを別々に作成する必要がありますが、京都大学より無料配布されている ST (Perl Package for Simulation and Test, http://www-lab13.kuee.kyoto-u.ac.jp/~kobayashi/ST/ )を使用すれば、Perl記述により、Verilog HDLとHSPICEの入力信号の両方に変換することができます。

Design Flow
図1.5 フローチャート

1.7 実習用チップとピンアサインについて

本実習では、実習用チップ(CMOS 1.2um, QFP80)の中の遅延バッファーと同期リセット付8ビットカウンターを使用します。パッドと回路の接続関係は、表1.1のとおりです。

Test Chip Symbol
図1.6 実習用チップ 図1.7 8bit カウンタのシンボル図

表1.1 信号パッドのリスト
パッド番号信号名役割
6bin遅延バッファ入力
7bout遅延バッファ出力
21coutキャリー
22cinカウントUP
23clkクロック(立上りエッジ)
24rst同期リセット
30d0データ入力(LSB)
31d1データ入力
32d3データ入力
33d2データ入力
34d4データ入力
35d5データ入力
36d6データ入力
37d7データ入力(MSB)
42ldロード
43q7データ出力(MSB)
44q6データ出力
45q5データ出力
46q4データ出力
47q3データ出力
48q2データ出力
49q1データ出力
50q0データ出力(LSB)

予め、パッド番号−パッケージピン番号−DUTサブボードのピン番号−ATS100のポート番号の関係の表を作成しておく必要があります。ただし、最終的に必要となるのは、信号名-ATS100のポート番号の対応だけです。

パッケージピン番号 - DUTサブボードのピン番号 - ATS100のポート番号対応表
パッケージプロセスとチップサイズ対応表注意点
QFP80 オンセミ CMOS 1.2u 2.3X2.3mmダウンロードオンセミ CMOS 1.2u 2.3X2.3mmの正規電源ピン配置に対応します
ローム CMOS 0.18um 2.5X2.5mmダウンロードATS-100上では、VDDとVDDOが逆になります
QFP160 オンセミ CMOS 1.2um, 4.8X4.8mm
ローム CMOS 0.18um 5.0X5.0mm
ダウンロードオンセミ CMOS 1.2u 4.8X4.8mmの正規電源ピン配置はDUTサブボードと互換性がないので、オンセミで設計する場合も、この対応表に従ってピン配置してください
QFP208 ローム CMOS 0.18um 5.0X5.0mmダウンロードこのDUTサブボードは、オンセミ CMOS 1.2u 7.3X7.3mm には対応できません
DUTサブボードのピン番号 vs. ATS100のポート番号対応表(全ボード共通)
※ 同じパッケージでも、電源ピン、IOピン、NCピンの配置は、使用テクノロジやチップサイズにより異なるので注意。

実習用チップの信号ピンアサインを表1.2に示します。信号名(チップ上のポート名)からATS-100のチャネル番号までの対応関係が記載されています。複数の電源電圧や論理振幅を使用する場合は、電圧も記入した表を作成すると便利です。

表1.2 実習用チップの信号ピンアサイン
Signal Pad Pin# Pkg Pin# DUT Sub-board Pin# ATS-100 IN/OUT
bin 6 9 11009 5A0 in
bout 7 10 11008 4A7 out
cout 21 31 10707 6B6 out
cin 22 32 10712 7B3 in
clk 23 33 10711 7B2 in
rst 24 34 10710 7B1 in
d7 37 54 11410 5B1 in
d6 36 53 11411 5B2 in
d5 35 52 11412 5B3 in
d4 34 51 11407 4B6 in
d3 32 49 11409 5B0 in
d2 33 50 11408 4B7 in
d1 31 48 11404 4B3 in
d0 30 47 11405 4B4 in
ld 42 66 10306 6A5 in
q7 43 67 10305 6A4 out
q6 44 68 10304 6A3 out
q5 45 69 10309 7A0 out
q4 46 70 10308 6A7 out
q3 47 71 10307 6A6 out
q2 48 72 10312 7A3 out
q1 49 73 10311 7A2 out
q0 50 74 10310 7A1 out
実習用チップのピン対応表 (上の表と同じ内容, CSV, 0.6kB)



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