1 準備

1.1 実習用チップの内容

実習用のチップ上の、8bitカウンタ、微小パッド、遅延バッファを例に説明を行います。信号用パッドの配置は図1.1、信号の内容は表1.1をご覧下さい。なお、パッドの番号とパッケージのピン番号は異なりますので、ご注意ください(IMS ATS-100 実習解説書のページ参照)。

EB3 chip photograph
図1.1 EBプローブ実習用チップ
表1.1 信号パッドのリスト
パッド番号信号名ポートの種類
6bin遅延バッファ入力
7bout遅延バッファ出力
19padS微細パッド(小)への直結
20padL微細パッド(大)への直結
21coutカウンタ・キャリー出力
22cinカウントUP
23clkクロック(立上りエッジ)
24rst同期リセット(0リセット)
30d0データ入力(LSB)
31d1データ入力
32d3データ入力
33d2データ入力
34d4データ入力
35d5データ入力
36d6データ入力
37d7データ入力(MSB)
42ldロード
43q7データ出力(MSB)
44q6データ出力
45q5データ出力
46q4データ出力
47q3データ出力
48q2データ出力
49q1データ出力
50q0データ出力(LSB)
1.2 チップの表面処理と取り付け

チップの表面は、保護膜で覆われているため、電子ビームが配線まで到達しにくいという問題があります。このため、できたら保護膜を剥離しておくと好結果が得られます。エッチング方法は、ADVANTEST E1380A EBテスト・システムトレーニング試料を参照してください。また、観測領域が限定されているなら、金沢大学VDEC北陸支部のFIB装置を使用して、保護膜をエッチングしておくことも可能です。あまり正確な像観察の必要がなく、波形を正確に観測したい場合には、チップ内の配線に微小なパッドを設けておくのも一つの手です(電子ビームプローブは、回路に対して無負荷です)。

EBテストシステムを使うためには、パッケージを開封する必要がありますが、プラスティックパッケージを開封するには、危険な薬品を使用する必要があります。VDECへの設計データ提出時に、セラミックパッケージの必用個数を聞いてきますので、ここで、必要数を注文してください(但し、追加料金が必要です)。セラミックパッケージは、ピンセットで蓋がはがせるようになっています。VDECのオンセミを使用する場合は、デフォルトでセラミックパッケージです。

チップは、ATS-100の上のVDECアダプトにDUTサブボードを装着して、LSIテスタを使用するときと同様に取り付けます。チップの取り付け方向には、特に注意が必要ですので、IMS ATS-100 実習解説書のページを参照して間違えないようにしてください(DUTの一番ピン方向と、チップの1番ピン方向は逆向き)。

Chip on DUT board
図1.2 EBプローブ実習用チップの取り付け状態

1.3 LSIテスタとEBテストシステムのドッキング

VDECアダプトには、高さ調整用のアルミリングが何段か重ねてあります。通常、LSIテスターの終了時には、図1.3のように4つのアルミリングが重ねられて、その上に蓋が乗っているはずですが、蓋と一番上の11mmのアルミリングは、取り外してください。取り外した、アルミリングは、図1.4の収納箱に入れてください。

Spacer Rings on VDEC adapt
図1.3 VDECアダプト用アルミ・スペーサ・リング(横面図)

Flange box
図1.4 VDECアダプト用パーツケース

EBテストシステム制御用ワークステーション(vlsiebp)にログインします。このワークステーションは、VLSI設計室のアカウントとは異なるので、IDとパスワードは、TAまたは装置管理者に直接聞いてください。

EBテストシステムのチャンバは、めくら蓋をした状態で、真空引きされています。蓋を開けるために、以下の手順でチャンバをヴェントしてください。

  1. ディスクトップで、右クリックして、ポップアップメニューから DUET(EBT controller)を選んで、ランチャーを起動する(既にランチャーが起動している場合もあります)
  2. ランチャーでEbeCon(E-Beam Controll Tool)をクリックすると、EB CTRLウインドウが起動
  3. EB CTRLで、Vacuumボタンをクリックすると、Vacuum Setupウインドウが表示される
  4. Vacuum Setupウインドウで、Standby, Probing, Change DUT のチェックボックスのうち、Standby がチェックされていることを確認して、Change DUTをクリック
以上で、チェンバ内が大気圧になるまで暫く待ちます。大気圧になると EB CTRL ウインドウの Vacuum 欄が赤色に変わります。

※ Vacuum Setup ウインドウでは、Standbyは真空引き状態で電子線が出ていない状態、Probingは電子ビームが出ている状態、Change DUTは大気圧開放中を意味しています。

図1.5のヘッド回転レバーを回して、ヘッドを横向きまたは上向きに回転する。3mm角の6角レンチでめくら蓋をはずし、測定用取手に換えます(図1.5)。測定用取手は、図1.4の箱の中に入っています。めくら蓋をはずすときや、測定用取手をつけるときに無理な力がかからないように注意してください。また、ねじ穴の位置をよく確認して行ってください。測定用取手を取り付けたら、EBヘッドを元の位置に戻します。

EB Head
図1.5 EBヘッドの回転(取手の向きに注意)

次に、EBヘッドとLSIテスタをVDECアダプトを介してドッキングさせます。図1.6に使用するねじの位置を示します。

  1. 固定ネジAを緩める
  2. UP/DOWNネジを押し込みながら回して、EBヘッドを一番上まで持ち上げる
  3. 固定ネジBを緩めて、EBヘッドを回転させ、VDECアダプトの上へ移動させる
  4. UP/DOWNネジを押し込みながら回してEBヘッドを下げ、VDECアダプトとドッキングさせる(VDECアダプトのばねが少し縮むまで)
  5. 固定ネジBを締める(横位置固定)
  6. 固定ネジAを締める(高さ固定)
Lift Mount
図1.6 EBヘッドの移動に使うネジ 図1.7 LSI テスタと EB ヘッドがドッキングした状態

1.4 VDECアダプトの真空引き

Vacuum Setup ウインドウで、Standby チェックボックスをクリックすると、真空ポンプが回転します。EB CTRL ウインドウの Vacuum 欄が赤から黄色になったら真空引き完了です。EB CTRL ウインドウの真空度ゲージで真空度をチェックできます。

※ この状態から、Vacuum Setup ウインドウProbing をクリックすると、EB CTRL ウインドウの Vacuum 欄が黄色から緑色にかわり測定が開始できます。

[注意] 真空引きする前に、LSIテスタから信号が印加されていないことを確認してください。信号を印加したまま真空引きすると放電する恐れがあるようです。

1.5 終了方法

終了前に、LSIテスタのテスト動作が止まっていることを確認してください。EBテストシステムの終了手続きは、下記のようにします。

  1. Vacuum Setup ウインドウで、Standby をクリックし、電子銃のバルブを閉じる(EB CTRL ウインドウのVacuum欄が黄色になる)
  2. Vacuum Setup ウインドウで、Change DUT をクリックして、EB CTRL のVacuum欄が赤になるのを待つ
  3. 固定ネジAを緩める
  4. UP/DOWNネジを押し込みながら回して、EBヘッドを一番上まで上げる
  5. 固定ネジBを緩める
  6. EBヘッドを回転させ、定位置にもどし、固定ネジBを締めるて固定
  7. UP/DOWNネジを押し込みながら回転させて、EBヘッドを一番下まで下げる
  8. 固定ネジAを締めて、EBヘッドを固定 (この状態で、DUT交換を行うことができます。)
  9. EBヘッドの回転レバーを回して、図1.5のようにEBヘッドを回転させる
  10. 3mm6角レンチで、測定用取手を取り外し、めくら蓋に交換
  11. 回転レバーでEBヘッドを元の位置に戻す
  12. Vacuum Setup ウインドウで、Standby をクリックし、EB CTRL ウインドウのVacuum欄が黄色になるまで待つ
  13. WSのディスプレーの電源を切る(チャンバーを継続して真空引きするので、ログアウトしないでください。後の処理は管理者が行います。)
  14. LSIテスタを所定の手続きに従って落として、デバイスを取り外す。
  15. 11mmのアルミリングをVDECアダプトに乗せ、プラスティック蓋をする。導電性シートをLSIテスタにかけて完了
Finish
図1.8 終了状態(定位置)。ワークステーションは、真空引き状態のままにしておく



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