3. 回路図入力

  1. セレクタ回路図の作成

    ライブラリ ic1 の下に、MUX2 というセルを作成し、その中にセレクタの回路を入力する。Library Managerのメニューから、[File] → [New] → [Cell View...] を選ぶと、New Fileフォームが表示される。下記の表のように設定を行い、OKボタンをクリックすると、Library ManagerのLibrary = ic1 の Cell欄 にMUX2 が表示され、Virtuoso Schematic Editor XL Editing というウインドウが起動する。以後、このウインドウを回路図エディタと呼ぶ。

    Libraryic1
    CellMUX2
    Viewschematic
    Typeschematic
    Open withSchematics XL
    Always use this application for this type of fileCheckを入れる

    Fig.3.1
    回路図エディタの画面構成

    回路図エディタの操作は、メニューから実行する方法、ツールバーを使用する方法、バインドキー(キーボードで特定の文字を押すことにより実行)による方法の3種類が用意されている。慣れないうちは、メニューかツールバーを使用し、慣れてきたらバインドキーを使用すると作業効率が高くなる。マウス操作によるオブジェクトの移動は、原則として、2カ所のクリックにより行う。Windowsアプリケーションのように、ドラッグを使用しないので、慣れが必要だ。

    回路図エディタの基本操作 ---

    1. 部品(インスタンス)の呼び出し
      回路図エディタのメニューから、[Create]→[Instance…]を選ぶと(バインドキーi)、Add Instanceフォームが現れるので、Browseボタンをクリックして、Library Browserを起動する。Library = kanazawa の中の INV または NAND2 を選ぶと、回路図エディタ上にインバータまたはNANDのシンボルが現れるので、適当な位置をクリックして配置し、ESCキーでインスタンス配置モードから抜ける。向きを変えて配置したい場合は、配置する前に、Add Instanceフォームの Rotate, Sideways, Upside down の各ボタンをクリックして向きを変更してから配置する。インスタンスを配置した後で向きを変える場合は、メニューより[Edit] → [Rotate]を選ぶ。

    2. 配線と部品の移動
      回路図エディタのメニューから、[Edit]→[Move]で部品を移動する(バインドキーm)。ドラッグではなく、部品をクリックしてから移動先を再度クリックする。 回路図エディタのメニューから、[Create]→[Wire(narrow)]で配線を描く(バインドキーw)。こちらも、ドラッグではなく、ワイヤを接続する端子をクリックすることにより配線を行う。電源は、論理ゲートの内部で自動的に接続されているため、ここでは配線しなくてもよい(電源はグローバル変数として定義してある)。

    3. 入出力端子(Pin)の作成
      回路図エディタのメニューから、[Create] → [Pin...]を選ぶと(バインドキーp)、Add Pinフォームが現れるので、Pin Names欄に入力または出力端子の名前を入力し、Direction のリストから、inputまたはoutputを選ぶ。回路図エディタの適当な場所をクリックしてPinを配置する。

      セレクタのPinリスト
      Pin NameDirection
      Ainput
      Binput
      SELinput
      Youtput

      [注意] Cell Name や Pin Nameは、大文字または小文字に統一する習慣を付けよう。CADツールやデータフォーマットによって、大文字と小文字を見分ける場合と見分けない場合があることや、また、大文字と小文字を使い分けると、バグの原因となりやすいためだ。ここでは、原則として大文字を使用する。

    4. 画面の操作
      回路図エディタの画面は、[キーで縮小、]キーで拡大する。また、fキーで回路図全体を表示することが出来る。

    5. 削除およびアンドゥ
      インスタンスや配線を削除する場合は、削除するものを選んで、DELキーを押す。全ての操作は、キーボードで u を押すことによりアンドゥができる。

    6. 回路のチェックと保存
      回路が完成したら、保存を忘れないように。メニューより、[File] → [Check and Save]を選ぶか、または、ツールバーのフロッピに緑のチェックマークが付いたアイコンをクリックする(バインドキーCTRL+s)。回路図に問題があると、エラーメッセージが表示されるので、メッセージに従って修正を行う。

  2. シンボルの作成

    回路図を作成したら、その回路を表すシンボルを作成しておく。これにより、この回路を別の回路図上にインスタンスとして呼び出して使用することが出来るようになる。回路図エディタのメニューより、[Create] → [Cellview] → [From Cellview...]を選ぶと、Cellview from Cellviewフォームが表示されるので、From View Name = schematic, To View Name = symbol となっていることを確認し、OKボタンをクリックする。すると、Symbol Generation Options フォームが現れるので、下記のように設定を行い、OKボタンをクリックするとLibrary ManagerのView欄に symbol の表示が現れ、Symbol Editor L が起動する。デフォルトでは四角いシンボルが自動作成されるので、形が気に入らなければ編集を行う。ここでは、デフォルトのまま、Symbol Editor Lを終了する。終了は、メニューより、[File] → [Close All]を選ぶ。

    表示方向Pin名
    Left PinsA B
    Right PinsY
    Bottom PinsSEL
    ※ 複数のPin名は、スペースで区切る。

    [参考] CADツールを使用する場合は、ウインドウを終了するときに、メニューから終了コマンドを選ぶように心がけよう。ウインドウの終了ボタンを使用すると、正常終了できずメモリを消費することがある。

  3. テストベンチの作成

    作成した回路の動作をシミュレーションするための、測定回路(テストベンチ)を作成する。Library Managerのメニューより、[File] → [New] → [Cell View...] を選ぶと、New Fileフォームが表示される。下記の表のように設定を行い、OKボタンをクリックする。

    Libraryic1
    Celltb_MUX2
    Viewschematic
    Typeschematic
    Open withSchematics XL
    Always use this application for this type of fileCheckを入れる

    新しく開いた回路図エディタに下記のようなテストベンチの回路を入力する。回路が完成したら、表のように各素子の値(Property)を入力する。回路図上で値を設定したいシンボル(部品)をクリックして、メニューより、[Edit] → [Properties] → [Objects...]を選ぶと(バインドキーq)、Edit Object Properties フォームが現れるので、各欄に値を設定していく。特にSUPPLY(電源)セルのVDD, VSSの設定を忘れやすいので注意すること。また、Propertyの値は、回路図エディタ左側のProperty Editorウインドウでも設定できる。単位(V, F, s など)は勝手に付けられるので入力しなくてよい。SI接頭辞(f, p, u などの)は自分で付ける必要がある。

    Fig.3.2
    テストベンチの回路

    使用するインスタンスのリスト
    LibraryCellViewProperty設定
    ic1MUX2symbolなし
    analogLibcapsymbolCapacitance = 10f
    analogLibvddsymbolなし
    analogLibvsssymbolなし
    analogLibgndsymbolなし
    kanazawaSUPPLYsymbolVDD = 1.8
    VSS = 0
    analogLibvpulse(Aに接続)symbol
    Voltage1   = 0
    Voltage2   = 1.8
    Period     = 2n
    Delay time = 1n
    Rise time  = 50p
    Fall time  = 50p
    Pulse width = 1n
    
    analogLibvpulse(Bに接続)symbol
    Voltage1   = 0
    Voltage2   = 1.8
    Period     = 4n
    Delay time = 2n
    Rise time  = 50p
    Fall time  = 50p
    Pulse width = 2n
    
    analogLibvpulse(SELに接続)symbol
    Voltage1   = 0
    Voltage2   = 1.8
    Period     = 8n
    Delay time = 4n
    Rise time  = 50p
    Fall time  = 50p
    Pulse width = 4n
    

  4. 配線名付け
    表示はされないが、各配線には自動的に配線名が割り振られる。回路図エディタは、この配線名を使用してネットリストを自動作成する。しかし、自動的に割り振られた配線名では、回路図上のどの配線か分かりにくいため、手動で名前を付けることもできる。後でシミュレーション結果を観察したい配線には名前を付けておこう(付けなくても問題はないが、何の波形か分からなくなる)。メニューより、[Create] → [Wire Name ...]を選ぶと(バインドキーl(エル))、Add Wire Nameフォームが現れるので、Names欄に配線名を入力して、回路図エディタで名前を付けたい配線をクリックする。MUX2の端子名と同じ配線名でも構わない。

    [参考1] 電源の配線には、電流の往路と復路の2本が必要となる。教科書等では、これらの配線をVDD(正電圧)とGND(0V)で表記している場合が多いが、集積回路の設計では、電源配線にVDD(電源のプラス側に接続)と VSS(電源のマイナス側に接続)と表記するのが一般的であるので、ここでも、VDD, VSS 表記法に従っている。VDDとVSSのどちらかをゼロ(基準)としなければならない理由はないため、VDDとVSSとは別に、基準電位をGND(またはVCM)と表記することが多い。この回路の内部でインスタンスとして呼び出されているINVやNAND2も、内部でVDDとVSSが使用されているため、VDDとVSSに電圧源を接続して電力を供給しなければならない。ここでは、VDD = 1.8V, VSS = 0V, GND = 0V(基準電位)として電源電圧VDD, VSSを与えている。

    [参考2] 全ての回路に共通な、VDD, VSS, GNDを使用してしまうと、電源電圧制御やアナログ-ディジタル間の電源分離といった、回路の高性能化技術が使用できなくなるため、電源の分離が必要な場合は、電源配線を入出力端子(双方向端子)に接続し、VDD, VSS, GND などの共通配線(グローバル配線)とは異なる名前を付ける。ただし、電源配線をいちいち回路図に書かないといけないので、回路図は読みにくくなる。本実習では、電源は1系統しかないので、VDD, VSS, GNDを使用している。

  5. テストベンチのチェックと保存
    テストベンチが完成したら、チェックと保存をするのを忘れないこと。引き続き、次の実習項目に進む場合は、回路図エディタは開いたままにしておく。


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