市販部品の殆どのコンポーネント(回路図シンボル)とフットプリント(はんだ付けパターン)は、KiCadの標準ライブラリに登録されていますが、特殊な形状や寸法の部品、ベアチップ直付けランド、ねじ穴などの構造部品は、自作する必要があります。また、SMD(Surface mount device)を手作業ではんだ付けする場合も、標準的なフットプリントよりも大きめのランドパターンを作る必要があります。

KiCadのライブラリは、コンポーネントライブラリとフットプリントライブラリに分かれていて、CvPcb (Component vs. Pcb ?)ツールを用いて、プロジェクトごとに、コンポーネントとフットプリントの関連付けを行います。このため、同じ回路図記号に対して、複数のフットプリントから適当なものを選択して使ったり、対応するコンポーネントがないフットプリントが作成できるので便利です。

ここでは、練習のため、モノワイヤレス(株)のTWE-Lite ZigBeeモジュールのコンポーネントとフットプリントを作成してみます。

コンポーネントの作成

  1. 作業フォルダ内に、ライブラリを保存するフォルダ(例:myLib)を作成
  2. シンボルエディタを起動

    Component library editor

  3. シンボルエディタのメニューより、「ファイル」-「新規ライブラリ...」を選ぶ
  4. ライブラリの保存フォルダ(myLib)とファイル名(myLib.lib)を設定
  5. グローバルライブラリか、プロジェクト専用ライブラリか聞いてくるので、好きな方を選択
    ver.5 では、作成したライブラリはプロジェクトに自動的に登録される。
  6. 上部ツールバーより、「新規コンポーネントを作成」をクリック
  7. シンボルを登録するライブラリを選択(例:myLib)

    New component

  8. シンボルプロパティフォームが表示されるので、シンボル名欄に、TWE-001Lを入力してOKボタンをクリック
  9. 上部のツールバーで、「シンボルに合わせてズーム」ボタンをクリックしてコンポーネント名の文字を拡大

    Fit command

  10. 右ツールバーで、「シンボルにピンを追加」ボタンをクリックし、シート上のピンを置きたい場所付近をクリック
  11. ピンのプロパティを下記のように設定して、OKボタンをクリックし、ピンを配置

    Pin property

  12. ピンを配置したら、右側ツールバーで、「シンボルのボディに矩形を追加」ボタンをクリックして、下記のような矩形を追加、さらに、「コンポーネントのボディに円を追加」ボタンをクリックして、アンテナ接続穴の位置に置く(通常は、1番ピンにマークする)

    Pin and shape

  13. フィールド(U?やTWE-001Lの文字)の上にマウスカーソルを合わせ、mキーを押して、フィールドを適当な場所に移動する
  14. 文字の大きさを変えたい場合は、文字を右クリックして、コンテキストメニューから「編集」を選ぶ
  15. メニューより、「全て保存」ボタンをクリックすると、先に作成しておいた myLib フォルダに、myLib.libというファイル名で保存
フットプリントの作成

  1. フットプリントエディタを起動

    Footprint editor

  2. メニューより、「ファイル」-「新規ライブラリ...」を選択
  3. 作成しておいたライブラリ保存フォルダ(myLib)に、ファイル名 myLib.pretty を入力して、「保存」ボタンをクリック(フットプリントライブラリには、.prettyをつける約束になっている)
  4. 上部ツールバーで、「新規フットプリント」ボタンをクリック
  5. フットプリント名に、TWE-001Lを入力

    New footprint

  6. ラベル(TWE-001, REF**の文字)にマウスを合わせ、mキーで中央付近から移動させる
  7. 右側ツールバーで、「パッドを追加」ボタンをクリック
  8. 編集画面をクリックすると、パッドが表示される
    1番ピンを原点にする場合は、縦横の青い線が交際しているところをクリックする。基準点は後でも変更できる。

    TWE-001Lの寸法図(手動アセンブリのためメーカ推奨寸法と異なるので注意)

    Footprint design

  9. 上部ツールバーの下のドロップダウンボックスで、グリッドを 0.6350mm(25mils)に設定
    [参考] 1 mil = 1/1000 in = 0.0254 mm. ドロップダウンボックスみには、1mm, 0.1mm, 0.01mm グリッドも用意されているが、必要ならば、メニューより、「寸法」 - 「ユーザグリッドのサイズ」でグリッドを指定し、ドロップダウンボックスで「ユーザグリッド」を選択することもできる。
    Grid dropdown list box

  10. パッドを右クリックして、ポップアップメニューから「パッドを編集」を選択
  11. パッドプロパティを次のように設定して、OKボタンをクリック

    Pad property

  12. 作成したパッドを右クリックし、ポップアップメニューから「パッド配列を作成」を選択
  13. 配列の作成フォームを次のように設定して、OKボタンをクリック

    Pad array

  14. 9番〜16番のパッドを囲むようにドラッグして、右クリックし、ポップアップメニューから、「数値を指定してブロックを移動」を選択
  15. アイテムの移動ダイアログが表示されるので、アイテム回転に90を入力してOKボタンをクリックすると、9番から16番のパッドが縦に並ぶ
  16. 同様にして、17番〜24番を180°、25番〜32番を270°回転させる
  17. 下図のように、各辺のパッドアレイを配置する(グリッド = 0.6350mm)

    [参考] 4方向に角度を変更したパッドを作成してから、各辺の配列を作成してもよい(この方が簡単かも)。この場合は、各辺の先頭パッドのパッド番号を設定し、配列作成フォームで、自動ナンバリングのチェックを外して、パッド配列を生成する。自動ナンバリングを行うと、自動的に初期値が1になるので注意。

    Pad placement

  18. 以下の手順で、基板にアンテナ装着用の穴を開ける
    1. 右側ツールバーで、「パッドを追加」ボタンをクリックし、1番パッドと32番パッドの中心線交点に配置する
    2. 配置したパッドを右クリックし、ポップアップメニューで、「パッドを編集」を選ぶ
    3. パッドプロパティを次のように設定しOKボタンをクリック
      [参考] NPTH(Non-plated through hole)は、部品面と半田面を電気的に接続しないただの穴

      Non-plated through hole

  19. F.SilkSレイヤーで、ピン番号などを書き込み、リファレンスのラベル(REF**)を適当な位置に移動させて完成
    TWE-001Lの文字のほうは F.Fabレイヤーで描かれており、基板には印刷されない。TWE-001Lモジュールのデータシートによると、モジュールの下には、シルク印刷やNPTH以外のスルーホールを配置しないことが推奨されている。
  20. 左側ライブラリリストで、myLibライブラリの中のTWE-001Lは選択されていることを確認して、メニューより、「ファイル」-「保存」を選択

    Saving footprint data

[参考] この例ではスルーホールがないので問題はありませんが、アニュラリング(スルーホールのランド残り幅)がDRCでチェックされないようです。アニュラリングの最小寸法より小さくならないように注意が必要です。P社の場合、0.15mm以上必要です。

その他の機能

  1. 距離の測定
    1. 測定したい解像度にグリッドを調整
    2. マウスカーソルを始点に合わせ、Shift + Spaceキーを押すと、ウインドウ下メッセージ欄の dx, dy の値が0にリセットされる
    3. マウスカーソルを終点に合わせ、dx, dy の値を読み取る
  2. コピー
    1. コピーするオブジェクトにマウスカーソルを合わせる
    2. CTRL + d キーでコピー
  3. ブロックコピー
    1. Shiftキーを押しながら、コピー範囲をドラッグ
    2. 複数のレイヤーが含まれる場合は、選択フォームが表示されるので、コピー対象だけにチェックを入れて、OKボタンをクリック

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