4. 回路シミュレーション

  1. シミュレーション環境の起動

    1. テストベンチを表示した回路図エディタのメニューより、[Launch] → [ADE XL]を選ぶ。
    2. Launch ADE (G)XLフォームが表示されるので、Create New View にチェックを入れて、OKボタンをクリック(※)。
    3. Create new ADE (G)XL viewフォームが起動するので、View 欄が adexl となっていることを確認してOKボタンをクリック。
    4. Choosing Designフォームが表示された場合は、tb_MUX2が選択されていることを確認してOKボタンをクリック。

    ※ すでにadexl view を作成済みの場合は、Open Existing Viewにチェックをすると、前に作成したシミュレーション設定を使用することが出来る。

    ADE XL (Analog Design Environment XL)が起動し、Library Managerにadexl viewが作成される。adexl viewは、シミュレーション設定を管理しているViewであり、次回からは、Library Managerからadexl viewを開いてシミュレーションを実行することができる。

    Fig.4.1
    ADE XLの画面構成

    ツールバーより、Create Test(歯車アイコン)または adexlタブの中に記載された項目Testsの、click hereの文字をクリックする(上図参照)。Choosing Designフォームが表示されたら、tb_MUX2の文字色が反転しているのを確認して、OKボタンをクリック。ADE XL Test Editor が起動する。ADE XL Test Editorにより各種の回路シミュレーション条件の設定を行うことが出来る。

    [注意] ADE XL Test Editor で設定した内容は、ADE XLのData View欄のTestsアイコン横の+をクリックして展開し、その配下に表示される "ライブラリ名:テストベンチ名" をクリックして呼び出すことができる。Create Test(歯車アイコン)により、何度もADE XL Test Editorを呼び出すと、複数の設定が保存されて、シミュレーション実行時に全ての設定でシミュレーションを繰り返し実行しようとするため、非常に時間がかかったりコンピュータのメモリが不足したりする恐れがあるので、注意しよう。

    Fig.4.2
    Data View欄

  2. 回路シミュレーションの設定と実行

    1. シミュレータの設定
      ADE XL Test Editor のメニューより、[Setup] → [Simulator...] を選択し、Simulator欄にspectreが表示されているのを確認してOKボタンをクリック。他のシミュレータが選ばれていたら、spectreに変更する。
    2. MOSFETモデルの指定
      ADE XL Test Editor のメニューより、[Setup] → [Model Libraries...]を選ぶと、Model Library Setupフォームが表示されるので、<Click here to add model file>という文字の右側の...ボタンをクリックすると、ファイルの選択画面になる。spice/spectre/bu40n1/realディレクトリの中へ入り、bu40n1typ.inc というファイルを選んでOPENボタンをクリック。Model Library SetupフォームのOKボタンをクリックする。ここで選択した、bu40n1typ.inc というファイルにMOSFETの特性を計算するためのパラメータが記述されている。
    3. コマンドライン・オプションの指定
      ADE XL Test Editor のメニューより、[Setup] → [Environment...]を選ぶと、Environment Optionsフォームが表示されるので、userCmdLineOption 欄に -csfe を入力して、OKボタンをクリック。この設定により、古いspectre構文を回路シミュレータが解読できるようにする。このオプション設定は、デバイスモデルの記述形式によっては必要な場合がある。
    4. 解析条件の設定
      ADE XL Test Editor のメニューより、[Analyses] → [Choose...] を選ぶか、Choose Analyses...ボタンをクリックし、Choosing Analyses フォームで、次の設定を行いOKボタンをクリックする。

      Analysistran
      Stop Time16n
      EnabledCheckを入れる

      この設定で、16ns間のTRAN解析(過渡応答解析)が行われる。ここでは、DC解析(直流解析)は実施しないので、ADE XL Test Editor のAnalyses欄のType = dc 横のEnableのチェックを外して、type = tran だけチェックを入れた状態にする。(type欄にdc解析が表示されていなければ、そのままでよい)
    5. 観測する配線の指定
      ADE XL Test Editor のメニューより、[Outputs] → [Setup...] を選ぶか、Setup Outputs...ボタンをクリックして、Setting Outputsフォームを起動する。From Schematicボタンをクリックすると、回路図エディタが表示されるので、A, B, SEL, Yに繋がる配線を順次クリックしていく。選ばれた配線は色が変わる。ここで、配線をクリックすると、電圧が観測される。また、インスタンスの赤四角のPinをクリックすると、そこに流れ込む電流が観測できる。ここでは、電圧波形を観測するので、青色の配線部分をクリックするように注意すること。全て選択し終わったら、ESCキーで、選択モードを解除し、Setting OutputsフォームのOKボタンをクリックして終了。もし、間違った配線を選択した場合は、ADE XL Test Editor のOutputs欄から、削除したい配線名をクリックして、Deleteボタン(赤いばつのアイコン)をクリックして削除し、再度、Setting Outputsフォームで正しい配線を選ぶ。
    6. シミュレーションの実行
      ADE XL(ADE XL Test Editorではないほう)のシミュレーション実行ボタン(緑の三角マークのアイコン)をクリックすると回路図からネットリストが自動生成され、続いてシミュレーションが実行される。左下のStatusバーが赤くなり、finished と表示されたらシミュレーションは成功している。何らかの問題がありシミュレーションが実行できない場合は、エラーメッセージが表示されるので、エラーメッセージの内容に従って、修正を行う。

      Fig.4.3
      ADE XL Test Editorの設定

    7. グラフの操作
      シミュレーションが成功すると自動的に、グラフウインドウ(WaveScan)が起動して、波形が表示される。全ての波形が一緒に一つのグラフ上に表示されると見づらいので、Strip Chart Modeボタン(横長長方形が縦に並んだアイコン:下図参照)をクリックして、波形を別々に表示させる。真理値表の通りに動作しているか確認しておこう。真理値表と異なっているようならば、配線や入力波形の設定に間違いがないか確認する。

      Fig.4.4

  3. パラメータ・スイープ

    シミュレーション条件や回路中の素子値を変更しながらシミュレーションを繰り返し、温度や素子値の変化に対する影響を調べることを、パラメータ・スイープ(パラメトリック解析)と呼ぶ。ここでは、MUX2の出力端子に接続した容量capの値を変えてみる。この容量は、この回路の後ろに接続される回路の入力容量や配線の寄生容量想定したものである。容量が大きいほど、MUX2の遅延時間が長くなるはずなので、試してみよう。

    1. ADE XLのtb_MUX2タブをクリックして回路図を表示し、メニューより、[Window] → [Assistants] → [Variables and Parameters]を選択すると、ADE XLの右側に、Variables and Parametersウインドウが追加される。
    2. tb_MUX2タブをクリックして、回路図ウインドウを表示し、MUX2の出力に接続した負荷容量をクリックして選択すると、選択されたC0が、[Variables and Parametersウインドウ(右側に現れたウインドウ)に表示される(Cの後ろの数字は異なることがある)。
    3. Variables and ParametersウインドウのC0の左側の+をクリックして展開すると C0の容量値が表示される。初期状態では、回路図エディタで入力した 10f が表示されている。この数字の部分をダブルクリックして、10f 100f 1000f(フェムト)に書き換える。これは、C0のパラメータcを 10fF, 100fF, 1000fF の3段階に変化させることを意味する。複数の数値の間は、スペースで区切る。(※)

      ※ 開始値:ステップ値:終了値 の形式で入力することもできる。

      Fig.4.5

    4. Data View(左側のウインドウ)のParametersを展開し、C0/c 10f 100f 1000f の表示が現れて設定が反映されたことを確認し(C0/cは、キャパシタC0のパラメータcを表す)、フロッピディスクアイコンをクリックして、シミュレーション設定の変更を保存し、ADE XLのRun Simulationボタン(緑色三角アイコン)をクリックすると、CLの値を3段階に変化させて、シミュレーションが行われる。どの程度のCLの値まで許容できるだろうか。1000fF = 1pF の容量は、この回路にとって、かなり大きな負荷であることが分かる。

  4. レポート提出用データの保存

    1. レポートとして提出するデータを保存しておくためのディレクトリを作成する。
      vlsi> cd ~/i
      vlsi> mkdir ic1_is_bbb_cccc
      ただし、bbbは名列番号、ccccは姓(ローマ字、文字数は任意)とする。
      
    2. テキストエディタ(emacsなど)で、readme.txt というファイルを作成。中には、名列番号と氏名を記入。
    3. シミュレーション結果のグラフデータの保存
      Strip Chart Modeで波形を表示し(上記 2-7.グラフの操作の項参照)、グラフウインドウのメニューより、[Graph] → [Edit...]を選び、Graph Attributesフォームで、Visible Strips 欄に12を入力する。全ての波形が表示されるようにグラフウインドウの大きさを広げる。[File] → [Save as Image...]を選ぶ。フォーマットはPNGとし、File:欄は、./ic1_is_bbb_cccc/simulation01_bbb_cccc.png とする。ただし、bbbは名列番号、ccccは姓のローマ字とする。
    4. シミュレーション結果のCSVファイル(表計算ソフト等で読める)の保存
      グラフウインドウのメニューより、[Tools] → [Browser...]を選ぶと、Visualization & Analysis XL Browser というウインドウが現れる。右側Signals欄のtran-tranをダブルクリックし、その配下のA, B, SEL, Y を、CTRLキーを押したままマウスカーソルでクリックして選択する。Send to Tableボタン(下図)をクリックするとシミュレーションデータの表(Table Window)が作成される。Table Windowのメニューより、[File] → [Save As CSV...]を選ぶ。ディレクトリ一覧から、先ほど作成しておいた ic1_is_bbb_cccc ディレクトリをダブルクリックで選び、File Name を、simulation01_bbb_cccc.csv として保存する。

      Fig.4.6
      Visualization & Analysis XL Browserウインドウ


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